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2008.11.30 Sun

燃えるような恋をしろ

わたしはまだ、近い身内の死を体験したことがない。

それがどんなに幸せなことか、最近になってやっとわかるようになりました。

我が家は両親、祖父母、夫婦円満。

父方、母方ともにじっさま・ばっさま健在のご長寿一家なのでございます。

今回父方の爺さん・婆さんと我が家、+従兄弟のみっくんで
昨日、今日と1泊2日で千葉県は外房まで旅行に出かけました。


お宿は海の目の前。
貸切のヒノキの露天風呂から海と満天のお星様。
夕飯は海鮮尽くしの船盛り付き。大満足のお宿でございました。

磯の宿 そとぼうhttp://www.sotobou.jp/index.html

6年振りに出かけた旅行。理由は婆ちゃんにありました。
ここのところ婆ちゃんは本当に痩せてしまって、急速に老いてゆく体の変化に
絶えられず、本当に元気がなかったのです。

84歳の婆ちゃんがギリギリ自分で歩ける今。
それは家族にとってみんなでゆける最後の旅行になるかもしれないと、
わたしの両親が企画した旅行だったのです。

旅行中はめずらしく沢山食べて、沢山笑って、痴話喧嘩も少々。
爺ちゃん、婆ちゃんそれはそれは楽しんでくれたご様子。

86歳の爺ちゃんは画家であり、俳句の先生をしています。
人に接することがとても多く本当に元気でピンピンしています。
わたしが大尊敬している人です。

わたしより60年以上先輩の爺ちゃんは、とても友達の多い人です。
笑い皺で顔全体が覆われていて、眉毛が1本7cmくらいあって、福耳の素敵なお顔。
顔から幸せが出ている人です。

そんな爺ちゃんが、この旅行で初めて戦争の話をしてくれました。

爺ちゃんが戦時中は食べ物がなく、なけなしのお金で買った闇市での米。
それが見つかり刑務所に入ったそう。蒸し暑い刑務所には扇風機がなく、爺ちゃんは
自分の服を脱いで、部屋の中央にたち、囚人たちに向かってやりたくもない扇風機役として
10日間過ごしたらしい。

戦争で友人たちはほとんど死んでしまって、運良く爺さんは生き延びたんだそう。


爺さんに『今まで嬉しかった事は何?』と質問すると、『親の愛情だな』と答えた。

『心配されているうちは分からないんだ。
だけど、自分が親になったとき、深く感謝するんだよ。
親とはいつになっても子供を心配するものさ。だから親を大切にしなさい。』

爺さんが言う言葉の一つ一つは不思議なくらい素直に体にはいってゆく。
一つ一つが深くて、わたしはいつも涙が出そうになる。

婆ちゃんとの馴れ初めを聞くと、これがまた面白い。

爺さんはハゼ釣りに出かけて、とても汚い適当な格好で帰ってきたそうだ。
親戚のおじさんが、お婆ちゃんを見合い相手にと連れてきていて、
とてもキレイにめかし込んでいたそうな。なんにも知らされていなかった爺ちゃんは
それはそれは驚いたそうで、婆ちゃんにほれ込んでしまったらしい。

それからもうすぐ70年になる。一緒になって70年とは立派なことだ。

独身で上手に恋愛のできないわたしからしたら、羨ましい。

わたしが結婚に憧れるのは、爺ちゃんと婆ちゃん、
そして夫婦円満の両親を見ているからだ。

爺ちゃんは言う
『わたしはもう86歳にもなったのに、こうしてお婆ちゃんと息子と孫と旅行ができる。
そして一緒においしいご馳走とお酒を飲んで、楽しそうに笑っているみんなを見るのが
本当に幸せなんだ。これ以上の幸せはないよ。』

くしゃくしゃの笑顔で話す、爺ちゃんを見ていたら 本当にそうだなぁ。と素直に思った。

爺ちゃんはわたしにこう告げる。
『広く歩いていきなさい。友達は多い方がいい。人に感謝することを忘れないこと。
人をもてなすことが大切だよ、お婆ちゃんのようにね。』

お金持ちでなくていい。そこに笑顔があれば、きっと幸せに暮らしていけると思う。
贅沢なんてしなくていいのだ。大好きな人が周りにいれば。
爺さんに憧れる。爺さんに憧れる。


そして最後にこういった。
『人生一度は、燃えるような恋をしなさい』

わたしも爺ちゃんと婆ちゃんのように、素敵な夫婦になりたい。
それには燃えるような恋をしないといけないらしい。

爺ちゃんと婆ちゃんが生きているうちに花嫁姿を見せられるだろうか?

それには早く一人前の絵描きにならないとな。
爺ちゃん、あたし頑張ります。

旅行先、雨が少しだけ降ったのだけれど、秋晴れの空には2本の虹が出ました。
旅行中沢山歩いて頑張った、婆ちゃんのために
山の神様がくれたプレゼントなのかもしれません。

婆ちゃんと爺ちゃんが病気もなく、健康で笑って過ごせますように。

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